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なぜ私たちはグッズを集めてしまうのか?行動経済学でひも解く、「グッズ収集の心理構造」

かつて私は、グッズを集める自分を「見栄っ張りなのかも」と思っていました。

でも今は、それがもっと深い“人間の心理”から来ていたことに気づいています。

この記事では、「なぜ私たちはグッズを集めたくなるのか?」という問いを、行動経済学の視点から読み解いていきます。

感情や意志だけでは説明しきれない、“選ばされている私たち”の行動パターンを一緒に探ってみませんか?

目次

オタクがグッズを集めたくなる心理とは?

金欠のときには「節約しよう」と思っていたのに、新作グッズの告知が出ると、つい手が伸びてしまう──。
それは決して、あなたの意志が弱いわけではありません。
巧妙なマーケティング手法が、あなたの購買欲をうまく刺激しているのです。

【保有効果】買ったグッズに愛着が湧く理由

たとえば、グッズをひとつ手に入れると「これ、やっぱり手放したくない」「あとで売るなんて考えられない」と感じた経験はありませんか?

この心理は、行動経済学では保有効果(Endowment Effect)と呼ばれています。

人は一度自分の所有物になったものに対して、実際以上の価値を感じる傾向があります。
「持っていないとき」は冷静だったのに、「手にした途端に愛着が湧いて手放せなくなる」──それが、保有効果です。

つまり、「一度買ったグッズを手放せない」のも、「初めて手に入れたグッズの感動が忘れられず次も欲しくなる」のも、心理的にはとても自然なことなのです。

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今思うと私もこれにハマっていたから、グッズ集めしていたんでしょうね…

【ツァイガルニク効果】あと1個…が止まらない心理

ガチャガチャやくじ形式のグッズで、「あと1個で揃う」と分かった瞬間、冷静さが吹き飛ぶ…そんな経験はありませんか?

この現象はツァイガルニク効果と呼ばれ、「人は未完了のことを強く意識し続ける」という心理から来ています。

「コンプしたい…!」という衝動は、この“未完のストレス”を解消したいという自然な欲求なのです。

【フレーミング効果】「限定」に弱いのはなぜ?

「○○限定グッズ、数量わずか!」「本日23:59までの受注生産!」
──そんな言葉を見た瞬間、財布のヒモが緩んだ経験はありませんか?
実はこれ、あなたの“意志の弱さ”のせいではありません。

これはフレーミング効果(Framing Effect)と呼ばれる心理現象で、情報の“見せ方”によって感じ方や判断が変わるというものです。

たとえば、「このグッズは5,000円」と言われるよりも、
「今買わないと二度と手に入りません」「在庫あと3個です」と言われたほうが、焦りが生まれやすくなります。

オタク活動では、“限定”や“残りわずか”という言葉のフレームが、商品そのものの価値よりも、今しかない機会を強調してきます。

これによって、

  • 使う予定のないグッズなのに買ってしまった
  • セットの中の一部だけが欲しいのに全種類購入してしまった

といった経験が起きやすくなるのです。

つまり、“限定”に弱いのもまた、人間の自然な認知のクセ。
まずはそれに気づくことが、モノとの距離感を見直す第一歩になります。

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私はイベントという限定をきっかけに、虚しさを感じてオタ活から心離れました。

なぜグッズが手放せないのか?──サンクコストの心理

物が増えたら、古いグッズは手放してもいいのでは?と客観的にも思うことはあっても、なかなか手放すのは難しいですよね。

実はこれも、行動経済学の視点で説明できます。

【サンクコスト効果】過去の努力が執着に変わる

「もう飾っていないし、正直ちょっと場所をとる…」
そう思っても、いざ手放すとなると、なんだか惜しくなってくる。
特に、たくさん集めたシリーズ物や、お金や労力をかけて揃えたコレクションほど、その傾向は強くなります。

これはサンクコスト効果(Sunk Cost Effect)と呼ばれる心理現象です。
「すでに払ってしまったお金や時間を“ムダにしたくない”」という気持ちから、合理的な判断ができなくなってしまいます。

たとえば、

  • 推しのライブグッズをコンプリートしたから崩したくない
  • 徹夜で並んで買った限定グッズだから、手放すのがもったいない
  • 高かったから売っても安くなるのが悔しい

──こうした感情は、過去にかけた「コストへの執着」が現在の選択を縛ってしまっている状態です。

でも、サンクコストはもう取り戻せない過去の投資です。
「これからの自分にとって、そのモノは本当に必要か?」という未来基準で考えることで、気持ちを整理しやすくなります。

【確証バイアス】思い出がグッズを手放せなくする

あのグッズは、推しの誕生日に仲間と盛り上がった日を思い出させてくれる。
だから、もう使ってないのに捨てられない…。

これは“感情的な付加価値”や“記憶のピーク”によって、そのモノが「ただの物」ではなく「過去の幸福体験の象徴」になっているからです。

さらに影響しているのが、確証バイアス(Confirmation Bias)です。

これは、「自分の選択は正しかった」と思いたい気持ちが、ポジティブな記憶ばかりを集めてくる現象です。

「このグッズを買ったのは、あの楽しかった時間の証」
「大切にしてきたから、今も手放せない」
──そうやって、過去の選択を正当化する材料として“思い出”を強調しがちになるのです。

でも、こう問い直してもいいのかもしれません。
「その思い出を大切に思う気持ちと、今の暮らしを見つめ直すことは、両立できるんじゃないか?」と。

【確証バイアス】思い出がグッズを手放せなくする

SNS投稿がグッズ集めを加速させる理由 

「届いた〜!」「○○ちゃんお迎え♡」
そんな投稿でタイムラインが彩られるたび、心がそわそわしたことはありませんか?

私もかつて、推し活用のアカウントで、グッズを並べては写真を撮り、SNSに投稿していました。
「自分も持っているよ」とアピールすることで、“推しへの愛”を証明したかったのだと思います。

これは、社会的証明(Social Proof)という心理が働いている状態です。
「みんながやっているなら、それが正しい/価値があるはずだ」と判断してしまう、無意識のバイアスです。

さらに、SNSという場では「いいね」やコメントという数字が、私たちの“自信”や“承認”の物差しになっていきます。
それはいつの間にか、「人に見せるためのグッズ集め」になっていたことにも気づかせてくれました。

私はなぜ“見せるために集めていた”のか 

最初は、好きな作品のグッズを持てたらいいなという純粋な気持ちで買っていました。
ところがSNSを見て、世の中にはたくさんグッズを持っている人がいることを知ります。

外は外、うちはうち──そう思っていたつもりが、いつの間にか比較の波に飲まれていました。

ある日、イベント帰りの電車で、ふと「私、今なにしてるんだろう…」と冷静になった瞬間。
そのとき、「私は“見せること”が目的になっていたんだ」と、ようやく気づいたのです。

気づいた私は、中古ショップにまとめて買取依頼をして、2回に分けて手放していきました。

オタクの購買行動は「設計された心理」だった? 

グッズを買う=オタクの証明
グッズを持つ=“愛”の深さの証明
グッズをSNSで共有する=“熱量”の証明

こうした価値観は、実はすべて“企業が設計したもの”である可能性があります。
商品に「意味づけ」がされることで、私たちは“買う理由”を与えられ、行動を誘導されているのです。

その衝動は“戦略的に作られていた” 

グッズを買ってしまった自分は、意志が弱かったわけではありません。

オタクのグッズ集めには、複数の心理が複雑に絡み合っている。
つまり、購入することを“選ばされている”状態だったとも言えるのです。

心理に気づけば、「選ぶ自由」が戻ってくる 

こうした心理的な仕組みに気づくことで、
「これは本当に自分が欲しいものなのか?」
という視点で、冷静に選べるようになります。

自分の選択が間違っていたわけじゃない。
ただ、私たちは思った以上に「巧みに誘導された状況」にいた。

だからこそ、「次にどう選ぶか」は、もう一度、私たちの手に戻ってくる。

それは、意志の強さではなく、“仕組みに気づいた人の特権”かもしれません。

おわりに

グッズを集めることには、たしかに意味がありました。

あの瞬間のときめき、仲間と分かち合った感動、自分の“好き”を形にした喜び。
それらはすべて、あなたの人生に彩りを与えてくれた、大切な記憶です。

でも同時に、私たちは知らず知らずのうちに「心理の設計図」に乗せられ、
“買うこと”自体が目的になっていたかもしれません。

行動経済学の視点から見えてくるのは──
「意思が弱かったから買った」のではなく、
「そう“選ばされる仕組み”があった」という事実。

この仕組みに気づいた今、私たちはようやく“選ぶ自由”を取り戻せます。

本当に必要なものを、納得して選ぶ。
過去に縛られるのではなく、これからの自分にとって最適な選択をする。

その第一歩が、「自分の行動の構造を理解すること」だったのかもしれません。

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この記事を書いた人

INFJの元オタクミニマリストとして、Niの視点から「感情と行動の構造」を語ります。FP3級・簿記2級・NISAの実践経験をもとに、暮らしとお金の新しい選び方をお届けします。

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